代表者氏名 | 並松 響子(なみまつ きょうこ) |
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代表者所属機関 | 順天堂大学大学院医学研究科 産婦人科講座 |
役職・課程 | 博士課程 |
助成年度 | 2022年度 |
妊産婦の生活と就労に関する大規模疫学研究
人口減少をたどる日本では労働人口の確保のため女性の社会進出が重要である。日本人女性の就業率は増加しており、妊娠出産を経験する年齢でも年齢階級別労働率は上昇し、第1子出産後に女性が就業を継続する割合も上昇している。しかしヨーロッパ諸国と比較すると、日本における妊娠中の退職者の割合は高く25%前後の就労妊婦が第1子妊娠中または出産後に退職することがわかっている。そこで、妊娠中の労働状況について多面的に調査し、妊娠中の退職に関連する因子を探索することを目的に本研究を計画した。副次的な調査として、妊娠中の就労調整に関わる診断書の利用状況や、妊娠中の就労と睡眠の質やメンタルヘルス、食事栄養状態との関連についても調査し解析を行った。
複数の産科医療機関を研究フィールドとして、産後数日経過した産褥婦を対象に記載式のアンケート調査票を施設内で配布し、妊娠生活と就労の両立に関するデータを収集した。調査票を半年間配布し、計975件の回答済み調査票を回収した(回収率54%)。結果、妊娠中の退職に妊婦の雇用形態、雇用先の従業員数、勤続年数が関連している事が判明した。また、診断書の代用となる母性健康管理指導事項連絡カードの利用実態も明らかになった。その他にも、妊娠中の就労と睡眠状況やメンタルヘルスとの関連が報告されており、それぞれ学術的な報告を行う予定である。
今回の調査では回答者の居住地が東京主体であったため、参加者の就業状況などに偏りが生じていた。本研究を足がかりに、今後は妊娠中の就業環境について全国的な調査を計画している。