研究概要

代表者氏名浅見 祐香(あさみ ゆか)
代表者所属機関新潟大学人文社会科学系
役職・課程講師
助成年度2022年度

研究テーマ

回復支援施設におけるギャンブル依存を対象とした認知行動療法プログラムの開発

研究概要

本研究では,国内外の依存症回復支援施設において実施されている従来型の心理学的支援である12ステップを考慮に入れた認知行動療法プログラムを開発するとともにその効果を予備的に検討することを目的とした。なお,ギャンブルに関しては,必ずしも完全にやめることのみが目標とはならず,金銭管理の下に適切な頻度でギャンブルに興じるといったことも目標となりうるため,ギャンブル障害患者とギャンブル行動を日常的に行うコミュニティサンプルとの比較を行い,適応的なギャンブル行動と不適応的なギャンブル行動との差異についても検討を行った。まず,ギャンブル障害患者群(91名)と,コミュニティサンプルのギャンブル障害疑い群(108名)および健常群(284名)におけるギャンブル障害に関連する要因を比較した結果,ギャンブル障害患者群およびギャンブル障害疑い群は,健常群よりもギャンブル行動の機能(正の強化および負の強化)が拡大しており,ギャンブル障害疑い群は健常群よりも認知の偏り,渇望が強いことが明らかにされた。次に,本研究において開発した認知行動療法プログラムに参加したギャンブル障害患者4名の参加時点と終了時点を比較した結果,認知の偏りの低減が示された。依存症回復支援施設を利用しているギャンブル障害患者は,重症度が高い臨床像であるにもかかわらず,現症が落ち着いた状態でプログラムに参加しており,認知行動療法を加えることによって,認知の変容が促進された可能性があると考えられる。