研究概要

代表者氏名佐々木 宰(ささき つかさ)
代表者所属機関東京大学大学院新領域創成科学研究科
社会文化環境学専攻
役職・課程博士後期課程
助成年度2022年度

研究テーマ

介護施設・事業所職員の性的マイノリティ利用者に対する意識と対応に関する調査研究

研究概要

首都圏A自治体内の介護保険施設・事業所の職員を対象に、性的マイノリティに対する意識、現場で当事者と出会った場合の対応等についてアンケート調査を行った。送付した2,070通に対し、343通(16.6%)の回答があった。特徴として、「普段から『利用者のなかに性的マイノリティがいるかもしれない』と思いながら仕事をしている」人は69.7%いたのに対して、当事者に「共感的な対応」「差別をしない対応」「個別ニーズに応じた対応」ができると回答したのは10%前後と低くなった。また3つの架空事例に対する「望ましい対応」「実際にとると思われる対応」では、性的マイノリティの利用者の希望や相談をそのまま受け入れる対応を望ましいと思いつつ、実際には組織的対応をとる対応が多くなった。「見えない」存在とされている性的マイノリティについて、多くの職員は介護等の現場に性的マイノリティの利用者が「いる可能性」を想像しつつも、実際の介護現場において「見えている」わけではなく、性的マイノリティの利用者に対する個別ケアの認識も、積極的・消極的なものを含めて非常に多様であった。個々の職員が性的マイノリティに対する理解を深め、適切な個別ケアの方法を明らかにすることは重要だが、これと同時に、職員間、あるいは個人と組織、機関と機関との間に齟齬が生じないような共通認識や組織としての倫理観をもつために、慎重かつ丁寧な検討の必要性が示唆された。