代表者氏名 | 佐藤 亜樹(さとう あき) |
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代表者所属機関 | 東洋大学福祉社会デザイン学部 社会福祉学科 |
役職・課程 | 准教授 |
助成年度 | 2022年度 |
高齢者等のセルフ・ネグレクトと多頭飼育崩壊~保護犬・保護猫団体と社会福祉行政・機関の連携が本人とペット・地域コミュニティにおよぼす影響~
本研究では、自治体と強い結びつきのある動物保護団体と、財政的独立性の高い動物保護団体の代表へのインタビューを通して、高齢者等のセルフ・ネグレクトによる犬・猫の多頭飼育崩壊がなぜ起きるのか、また、その解決に向けて、人間福祉の専門職に求められることは何かについて探索した。
その結果、動物保護団体は、多頭飼育崩壊を「飼い主の経済的貧困、精神障害、社会的孤立・孤独」の問題として捉え、動物および飼い主のために、各団体が蓄積した経験をほぼ無償で提供していることが明らかとなった。
1990年代から2015年頃は、人間福祉の専門職が「人と動物の問題」を切り離し、動物の保護や譲渡先探しを動物保護団体に「丸投げ」することが多く、動物保護団体は、そのことに苦悩することが多かった。しかし、当該団体の方が人間福祉の専門職に先に歩み寄り、協働を提案することで、動物保護団体と行政等の人間福祉の専門職が、当該問題やそれにまつわる感情を共有し、個人レベルでの信頼関係を構築していることが明らかとなった。
多頭飼育崩壊問題の早期発見と予防のための手がかりとして、人間福祉の専門職が、動物保護団体の知見を学ぶことの重要性が示された。ソーシャルワーク専門職は、利用者と対等な関係を構築し、利用者がそうせざるを得なかった事実を受容することが求められるが、多頭飼育崩壊案件では、危機介入モデルを元に、将来的な見通しを示し、時には諭す等、支援する側とされる側が、ある程度の上下関係を構築しながら安全な愛着関係を育むことが求められていることも示された。
昨今は、同一の家族(単身者を含む)内に多様な問題が集中する傾向が強い。そのような現状に対応するためにも、様々な職種が情報共有し役割分担を行うことは、地域住民の生活問題の早期発見や予防に貢献できると考える。このことは当事者とその家族やペットの利益につながるだけではなく、コミュニティの安全や価値に寄与し、引いては協働した機関や施設の目標達成を促すのではないだろうか。