研究概要

代表者氏名中津 真美(なかつ まみ)
代表者所属機関東京大学バリアフリー支援室
役職・課程特任助教
助成年度2022年度

研究テーマ

聴覚障害のある親をもつきこえる子ども(CODA)の通訳役割に関する実態調査:ヤングケアラーの観点から

研究概要

CODAとは、聴覚障害のある親をもつきこえる子ども(Children of Deaf Adults)を指す。幼少期から親の通訳を担い、親と社会との仲介役となり、18歳未満であれば家族ケアを担うヤングケアラーに布置され(渋谷,2014)支援体制の検討が課題といえる。本研究では、中高生CODAにおける「通訳」のケアに焦点を絞った実態調査を行い、CODAの通訳状況および抱える課題と関連する要因を明らかにする。

無記名web質問紙調査8カテゴリ75項目にて、当事者団体及び機縁法にて調査依頼し、中高生CODA55名(男性15:女性39:未記入1)を分析対象とした。CODAは親と複数手段を用いて工夫しながら会話を成立させていた。相談先は主に身内であり、学校関係者は含まれなかった。通訳は、心理的負担が想定できる多様な場面を含み、平均8.3±2.7歳の幼少期から、平均2.9±2.6日の頻度で担い、小学生までの時期に34名(61.8%)が困難経験を有した。また、CODAは通訳の役割によって肯定的否定的の双方の心理的影響を受けていた。肯定的影響には、家族で通訳の話題をすること(β=.41)が関与し、否定的影響には、親との会話成立度が低いこと(β=-.50)と過去の通訳困難経験での困難度が高いこと(β=-.45)が関与した。

CODA支援では、①家族内で通訳等について覆い隠さず話題にする、②各親子に適した会話方法が選択できる支援体制と、その方法を学習できるしくみを整備する、③幼少期に過度の負担が伴う通訳を経験させない、④相談先を整備することを、支援体制検討の基礎的資料として提言したい。