研究概要

代表者氏名小川 恵美子(おがわ えみこ)
代表者所属機関大阪大学大学院人間科学研究科
役職・課程博士後期課程
助成年度2022年度

研究テーマ

支援対象者と支援者の心と健康を守るトラウマインフォームドケア研修に関する研究

研究概要

本研究は、虐待や貧困など困難な体験をした人を支援する福祉系支援者を対象に、トラウマの影響を理解し対応しようとするトラウマインフォームドな支援者の態度と、精神的健康にまつわる指標との関連について確認し、研修を実施してその効果を検証するものである。

3群介入前後比較デザインを用いた介入研究に、267名が参加した。ベースライン調査では、ARTIC-19と共感満足との間に強い正の相関(r = 0.57, p < .001)、バーンアウトとの間に弱い負の相関(r = -0.24, p < .001)、共感疲労との間に弱い負の相関(r = -0.24, p <.001)、セルフケア行動との間には弱い正の相関(r = 0.28, p < .001)、離職意向との間に中程度の負の相関が認められた(r = -0.42, p < .001)。介入の効果について、共感満足、バーンアウト、共感疲労について有意な差は認められなかったが、ARTIC-19の下位因子「支援者としての自己効力感」について、T1からT2、T3への有意な上昇が確認された(χ²= 9.01, p < .01)。自分の弱みより強みに焦点を当て、効力感を取り戻そうとする意識的態度を示す「支援者としての自己効力感」は効果が半年後も持続していた。一方、トラウマの再演を防ぎ支援者と支援対象者の安全を確立しようと努める「身体的心理的安全への配慮」は共感疲労を高める影響力が示唆された。TICの研修によりトラウマへの気づきが高まり疲労感が増す可能性を前提に、研修内容にセルフケアの情報を必ず入れておくこと、また短時間の動画による研修だけで終わりにせず、その後に双方向型の研修を行うことを検討する必要があると考える。