代表者氏名 | 工藤 由佳(くどう ゆか) |
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代表者所属機関 | ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン 心理学部 |
役職・課程 | 研究員 |
助成年度 | 2022年度 |
難治性うつ病からの回復の鍵となる、自己や他者を信じられる心の柔軟性「エピステミック・トラスト」の日本語版評価尺度の開発
背景:自分の経験や他者からの情報について十分に吟味し、学ぶ能力である「エピステミック・トラスト(認識的信頼)」はうつ病からの回復の鍵であるだけでなく、すべての人々が健康に暮らすために非常に重要な要素となる可能性がある。そのため本研究では、エピステミック・トラストの自記式質問票であるEpistemic Trust, Mistrust and Credulity Questionnaire (ETMCQ)の日本語版を開発した。
方法:ETMCQの日本語版翻訳に関しては、「患者報告式アウトカム尺度の翻訳のためのグッドプラクティスの原則」に準拠し手続きを行った。研究協力は18歳以上の東京基督教大学、関西大学の学生・教員、神戸聖隷福祉事業団の職員、宗教心理研究会会員に依頼した。日本語版ETMCQに加え、幼少期心的外傷質問票、4分類愛着スタイル尺度、一般健康調査票12項目、メンタライゼーション尺度の回答を依頼した。
結果:探索的因子分析の結果、三因子構造で最も解釈しやすい結果を得た。オリジナル版での設定と異なった分類が見られたため、その項目は除いて、確証的因子分析を行ったところ、CFI=0.820、RMSEA=0.094であり、モデルへの適合は、否定されないものの完全とはいえなかった。相関を評価したところ、幼少期の心理的ネグレクトが重度であるほど、認識的信頼が低く、幼少期の心理的虐待・ネグレクトが重度であるほど、認識的不信が高かった。また拒絶型のアタッチメント・スタイル傾向が強いほど、認識的信頼が低く、認識的不信が高かった。さらに認識的不信の傾向が強いほど、軽度精神障害の傾向があった。そして対自的メンタライゼーション能力が低いほど、認識的不信と認識的軽信が高かった。
考察:日本語版ETMCQ開発の予備的調査を行った。今後さらに研究協力者と増やし、ETMCQの項目を決定する予定である。