代表者氏名 | 薛 載勲(ソル ジェフン) |
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代表者所属機関 | 筑波大学テーラーメイドQOLプログラム開発研究センター |
役職・課程 | 常勤研究員 |
助成年度 | 2019年度 |
高齢者における身体活動と社会交流が睡眠の質に及ぼす影響:縦断的検討
本研究の目的は、地域在住高齢者を対象に睡眠の質と身体活動及び社会交流との関連性について横断研究(課題1)および縦断研究(課題2)によって検討することであった。課題1の対象者(n=988)は、2011-2020年度までの茨城県笠間市の健診事業への参加者(65-85歳)とした。課題2の対象者(n=351)は、課題1と同様に2011-2020年度までの参加者のうち、追跡調査に参加した者とした。身体活動は、高齢者版身体活動質問票PASEの総合得点を、社会交流量は、家族、友人の社会交流状況を問う質問票LSNSの総合得点を用いて評価した。睡眠の質は、PSQIを用い、先行研究を参考に総合得点が6点以上を不良な睡眠の質を有する者と定義した。課題1では、PASEおよびLSNSをそれぞれ2分位に分け、組み合わせた4群各群における不良な睡眠の質を有する確率をロジスティックス回帰分析を用いて検討した。その結果、PASEとLSNSがそれぞれ低値かつ不良群に比べて、高値かつ良好群は不良な睡眠の質を有する確率が有意に低かったが(OR:0.59, 95%CI:0.40-0.85)、一方のみ優れている場合は、有意差が認められなかった。課題2は、課題1と同様な群分けでベースライン時点で既に不良な睡眠の質を有する者を除いた上でCOX回帰分析を用いた。平均追跡期間は、3.6年であり、課題1と同様に、PASEとLSNSがそれぞれ低値かつ不良群に比べて、高値かつ良好群は、不良な睡眠の質に陥る確率が低かったが(OR:0.58, 95%CI:0.33-0.99)、一方のみ優れている場合は、有意差が認められなかった。累積生存率が半分になるまでの生存期間は、PASEとLSNSがそれぞれ低値かつ不良群は平均3年で、高値かつ良好群は、平均7年であった。本研究より、身体活動と社会交流量を共に豊富に保つことが良質な睡眠を維持する上で重要であり、一方が豊富であっても他方が乏しい場合は、良質な睡眠を維持することが難しい可能性が示唆された。