研究概要

代表者氏名綱島 洋之(つなしま ひろゆき)
代表者所属機関大阪市立大学都市研究プラザ
役職・課程特任講師
助成年度2018年度

研究テーマ

産消提携から農福連携に継承できるもの

研究概要

有機農業から派生した「産消提携」では,生産者と消費者の間に市場原理を超えた関係が構築された。国際的に知られたものの,近年は変質・停滞する傾向にあると言われている。現在注目を集めている「農福連携」が直面している課題を解決するために産消提携から何を継承すべきか。産消提携運動では,生産者と消費者が,例えば「クレーム」を契機として相互批判を行いながら,相互理解を深めてきた。一方,農福連携の実践者の多くは,労働者の技能を向上させようとすることに慎重な姿勢を示した。確かに,能力主義的であり社会的包摂の観点からは危険であるとすら言える。しかし,これまでの農業技術に関する論考を参照すると,別の視野が開ける。社会福祉の文脈では相互に矛盾すると見なされがちな,生産性の追求と多様な生命のケアの両立を図るところに,小規模農業の真髄があるとされているからである。「農」と「福」の間にある見かけ上の矛盾を止揚するためには,消費生活の質を高めることを至上命題としてきた社会福祉の範疇を超えて,「いかにして善く生産するのか」という有機農業が発してきた問いを継承する必要がある。