研究概要

代表者氏名小川 明子(おがわ あきこ)
代表者所属機関名古屋大学大学院情報学研究科
役職・課程准教授
助成年度2018年度

研究テーマ

コミュニティ・ラジオを活用した障害者施設とのコミュニケーションをめぐる研究

研究概要

 本研究は、精神障害のある人々が、ラジオ番組を制作し、コミュニティFMで発信する実践を通じて、社会参加の道筋を見出すこと、コミュニティの理解を得ることを目的としている。研究では、先行事例として、札幌の精神障害者通所施設におけるラジオ番組制作など4事例についてインタビューと分析を行った。それをもとに、アクション・リサーチの視点から、福井県の精神障害・依存症患者のデイケア・就労支援を行う一般社団法人に通う当事者とともに、番組制作・放送をコミュニティ放送で3回行い、当事者・事業者・放送局に対して、事前・事後の半構造化インタビューを実施した。当事者らは、当初、放送局側が提示する「放送コード」、事業所側の「成長への期待」に強い不安と違和感、緊張感を抱いていたが、この緊張感や責任感が、達成感をもたらした。とりわけ、1) 「公共性」を意識する番組制作では、少なからず他者を意識した語りが模索される中から自己が意識されたこと。また、2)準備プロセスを通じた、メンバー間での仲間意識や、放送が上達し、評価され、当初の緊張感を克服できたことで、自己肯定感の向上と、将来への希望というかたちで表現された。さらに音声メディアであるラジオに関しては、適度な匿名性が担保されるメリットとともに、番組が聞いて欲しい人に「聞かれているかもしれないし、聞かれていないかもしれない」という曖昧な状況にあることが当事者らのプレッシャーを軽減しつつ、語る意欲を喚起した。 本実践もとにした発展モデルとして「悩み続けるラジオ」が展開されている。