研究概要

代表者氏名定行 まり子(さだゆき まりこ)
代表者所属機関日本女子大学家政学部住居学科
役職・課程教授
助成年度2016年度

研究テーマ

ひとり親世帯の支援体制と地域の空間の活用からみた居住支援に関する研究

研究概要

 近年、子どもの貧困が社会問題となっているが、貧困世帯の半数以上はひとり親世帯であり支援施策が多様に展開されている。ひとり親世帯には、まず生活基盤である住宅確保の支援が不可欠であり、同時に子育てなどの公的な支援を受けながらも地域コミュニティの手助けを得られるような居住環境も大切である。本研究では、地域の空き家活用を見込んだひとり親世帯の居住支援の課題を見出すことを目的に、都市部の自治体、母子生活支援施設、母子世帯へのヒアリング調査、および空き家の実態調査を行った。
自治体では、各部課や関係諸機関が連携しながらひとり親世帯の問題を把握し、近年はひとり親世帯の子どもの学習支援などが積極的に行われているが、住居の支援は積極的とは言えず公営住宅は戸数が限られ民間賃貸住宅も土地柄家賃が高く、住宅確保は容易でない。母子生活支援施設では、入所世帯が健康・精神面や子育てなどに課題があり退所後も支援が必要な場合が多く、退所後の住居は生活環境を変えないよう施設周辺に構える傾向があるが住居を確保できずに退所が難しい場合も多い。母子世帯は、生活保護受給世帯でない場合の民間賃貸住宅の家賃助成、また公的な子育て支援サービスが利用できない場合の子育ての援助を求めている。空き家については、所有者が一応管理しているが物置状態である、所有者の死去後親族が対応していないなどの事情が多い。このように明らかとなった実態から、居住のセーフティーネットと空き家活用についてより具体的に検討することが今後の課題である。