研究概要

代表者氏名荒木 俊介(あらき しゅんすけ)
代表者所属機関産業医科大学小児科
役職・課程助教
助成年度2016年度

研究テーマ

障がいを持つ小児の家庭における保護者の就業状況の調査

研究概要

【背景と目的】女性の社会進出が促されているが、障害児を抱える家庭において、主な介護者となる母親が就労することは非常に困難である。本研究では障害児の保護者の就労状況の調査を通して、就労状況・経済的基盤の改善に必要な効果的な支援法を探ることを目的とした。【方法及び結果】産業医科大学病院小児科に通院中または北九州市内の障害児通所施設に通所している障害児の保護者を対象とし、独自に作成した無記名の自記式調査票を用いた。61世帯の保護者(59例が母親)から回答を得た。障害児の中央値は9歳であり、全例が身体障害者手帳を取得していた。母親(中央値40歳)が現在就労していたのは21世帯(33.9%)であり、その2/3は非正規雇用であった。52.4%が専門的・技術的職業に従事しており、66.7%は30名未満の企業に勤務していた。13名の母親は子どもの障害を契機とした転職・離職を経験していた。児年齢と母親の就労状況との関連はなく、児の就学が母親の就労に与える影響は明らかではなかった。また、正社員で働いている母親は2世代世帯に多く、同居家族が多いことが母親の就労にはつながっていなかった。母親の就労状況と世帯収入との間には有意な関連性を認めなかった。現在の就労の有無にかかわらず約8割の母親は経済的理由または自分自身のやりがいのため就労を希望している一方で、就労を希望しない母親も存在した。【考察】今回の調査でも障害を持つ子どもの母親の就業率は一般女性の半分以下と低く、非正規雇用が多かった。様々な支援事業が始まっている現在でも母親の就業が困難な状況であることが再確認された。経済的及び精神的側面からも母親の就業を支援することは重要であるが、希望の多様性を理解した新たな支援も必要である。