研究概要

代表者氏名熊﨑 博一(くまざき ひろかず)
代表者所属機関福井大学子どものこころの発達研究センター
役職・課程特命助教
助成年度2014年度

研究テーマ

子の社会性発達を支援する地域ケアシステムの中での縦断的視線計測

研究概要

 福井大学子どものこころの発達研究センターは、平成24年度より、福井県吉田郡永平寺町の母子を対象とした母子コホート研究体制を確立させている。母子コホート調査では健診時における問診票などのデータだけでなく、母親のメンタルヘルスや子の発達調査も並行して行っており、母子間相互作用を縦断的に検討している。乳幼児のアイコンタクトについて調査するために平成26年度より“GazeFinder”の導入を開始した。“GazeFinder”はカメラで被験者のモニター上の動画に対する注視点を捉え、注視点の分布を計測するシステムである。“GazeFinder”は設定が容易であり、多動な乳幼児でも高い注視率を獲得することが出来る。コホート調査の結果、母の抑うつ傾向は個人内で強く相関しており、もともと抑うつが高い人は以後の健診においてもSDSスコアは高く出やすいとの結果となった。10か月の母親のうつ得点は、1歳6か月の子どもの社会性(DENVER-Ⅱ予備判定票における個人社会性)と相関しており、母親の精神症状が子どもの発達と大きくかかわることが示された。GazeFinderにおいては、母親のSDS高値群(SDS≧40)とSDS低値群(SDS<40)の間で子どもの視線の矛先に大きな差異があった。またGazeFinderにおいて10か月時に標準的な経過をたどらなかった者の多くは、1歳半時においても標準とは異なる結果となった。我々は、今後も多くの支援者の継続的な協力のもと、育児が困難なケースの早期発見・早期介入・介入後のケアをサポートする地域システムの定着化を目指していきたい。