日韓こころの交流プログラム
シンポジウムとセミナーを通して、高齢化社会の課題にともに取り組む

  1. “日韓こころの交流”シンポジウム
    日本および韓国の社会福祉諸団体の協力のもと、両国で交互(一年毎)に社会福祉の専門家と一般市民を対象にシンポジウムを開催しています。両国の社会福祉関係者が一堂に集まり、国際的な視野でソーシャルワーク実践の専門性や役割などについて討議します。

  2. 専門職育成・国際交流セミナー
    福祉現場で働く若手専門職と専門職をめざす大学院生を公募選考し、約10名をシンポジウム開催現地に派遣して、一週間の「専門職育成・国際交流セミナー」を実施しています。この研修セミナーでは、高齢・児童・障害などの各分野において先進的な取り組みをしている施設の視察や大学院の授業に参加し、両国の福祉制度・実践の特徴と課題点を考察。交流を深めます。


第14回“日韓こころの交流”シンポジウム

2016年度は、第14回シンポジウムを同志社大学にて実施しました。

社会の中での子育て・子ども支援のあり方を問う

  • 2016年11月12日(土)
    午後1:30~午後5:10
  • 同志社大学今出川キャンパス
    良心館3階 305教室
    京都府京都市上京区今出川通烏丸東入(地下鉄「今出川駅」徒歩1分)

講師

〔基調講演〕

道中 隆
関西国際大学学長補佐、教授

〔事例発表/パネルディスカッション〕

石井 勲
ファミリーホームやわらぎの家施設長
荘保 共子
特定非営利活動法人こどもの里理事長
玉 敬 元
韓国地域児童センター連合会代表、森と木地域児童センター運営委員長
趙 素 娟
脱北児童グループホームウリチプ施設長

 コーディネーター

黒木 保博
同志社大学教授

日韓両国には「少子高齢社会」という共通課題があります。今回は、子どもの生活の場に焦点をあてて、両国の実態と対応・政策について考え、比較し、学びあうことになりました。家族機能の強化の視点からは、児童の貧困、児童虐待問題などの現状と支援策について理解を深めます。また子どもの最善の利益と社会全体で子どもを育む「社会的養護」充実の視点からは、日韓両国で取り組まれている4つの実践事例を学ぶことにします。

  • 参加対象:社会福祉従事者および研究者、大学院生、大学生、一般市民
  • 参加費:無料


募集要項・参加申込書のダウンロード

2016年度はセミナーの参加者募集はありません。
韓国から若手ソーシャルワーカーおよび大学院生を招聘します。


セミナー・レポート


「利用者一人ひとりの価値を尊重し、ともに生きる」-日本の福祉の“こころ”を体感
第9回 専門職育成・国際交流セミナーを実施

2016年11月6日から13日の一週間、第9回専門職育成・国際交流セミナーを実施しました。今回は韓国から、10名の福祉専門職員や社会福祉専攻の大学院生が参加し、セミナー開催地である大阪と京都の高齢、障害、児童等の諸分野で先進的な取り組みを行う施設を視察し、現場の実践を学びました。また同志社大学等の教授陣による講義を通し、学術的な面からも日本の社会福祉について理解を深めました。

熱心に講義に参加

大阪では、様々な障害から独立して日常生活を送ることが困難な人々に、生活の拠点や各種のサービスを提供している救護施設「三徳寮」、低所得者向けの共同住宅施設「サポーティブ・ハウス」、地域の子どもたちと親の拠り所となっているNPO法人「こどもの里」等を視察しました。
サポーティブ・ハウスを訪問した際、入居者の自立を支援する常駐のスタッフから、「この人にとって一番必要なことは何か、毎日考えています。血縁ではありませんが、家族のような存在で、大変なことがあっても”ありがとう”の言葉で吹き飛んでしまいます」という言葉を聞いて、参加者は「利用者を管理の対象とするのではなく、手助けし、ともに生きるという実践を見せていただけました」と、深く印象に残った様子でした。

施設内を見学

京都では、地域・行政・社会福祉法人が連携し、障害者と健常者が共に働く宿泊施設「リフレかやの里」や、四つの福祉団体が共同で運営する、地域共生型福祉施設「やすらの里」等を訪問しました。障害を持つ人を排除せず、自立した生活を送ることができるよう、ともに地域の活性化に尽力されている取り組みを知り、参加者は「このような環境で仕事ができれば、障害のある方も自尊心が高まると思いました。職員の方も誇りを持って仕事をされていて、素晴らしいです」と感心していました。また四つの法人が連携し、地域に開かれた福祉拠点をつくるという、町おこしの意味も込められた「やすらの里」の挑戦にも、大きな刺激を受けていました。

同志社大学の大学院生との交流会

同志社大学で行われた授業では、日本と韓国が共通して直面する「少子高齢化」に関わり、日本の低出産の現状について、専門家の先生から講義を受けました。講義の後には、現場で働く日本のソーシャルワーカーや大学院生との交流会が開催され、実践報告と「創造的な支援」をテーマにディスカッションが行われる等、同じ志を持つ仲間として親睦を深めました。
そのほか、セミナー中に生じた疑問や気づきを共有する時間として、セミナーの中盤と終りには、総括(振り返り)の時間が設けられています。この時間に参加者は、社会福祉を専門とする先生方に疑問点を確認し、理解を深めていました。

熱心に話し合い意見を出し合う参加者

参加者はこの研修で初めて集まったメンバーでしたが、それぞれの専門分野の知識を持ち寄って、互いに助け合いながら研修の内容を考察したり、役割分担をして記録をとったりと、チームワークを発揮していました。また現場経験が豊富で、日本の福祉システムから何かを学びとり、今後の自らの実践に役立てたいと強い探究心を持って毎日の研修に臨んでいました。
今回のセミナーを終えて、次のような感想が聞かれました。

  • 子ども達や高齢者にどういう姿勢で対応していったらいいのかと考えていましたが、日本の職員の皆さんを見て、利用者に対する接し方や、配慮の心、誠実に向き合っていくということを学びました。
  • 利用者中心を学びました。社会福祉にとって、一人ひとりの価値を大事にすることがどれだけ大切なことなのか気づきました。
  • 管理者として現場で長く仕事をしてきましたが、利用者を管理するのではなく、「彼らと一緒に」という観点に立っていったとき、今回の研修で学んだことを本当に活かすことができると感じました。
  • 一人の個人のために、どのようにしてネットワークを構築し、また社会資源を効果的に提供するのか、悩み考えていくことが大切だと思いました。人はともに生きるという社会福祉の価値を考えることができました。
  • 現場で情熱をもって仕事をしている職員の方々の「まごころ」を学びました。社会福祉はお金でも、スキルでも、システムでもなく、人がおこなうものであるという今回の学びをしっかりと心に置いて、韓国でも頑張りたいと思います。

利用者一人ひとりの価値観に配慮し、誠実に向き合う日本の現場スタッフの姿勢が、参加者の心に大きく響いたことが窺えます。参加者の皆さんは、これからもそれぞれの現場で、活躍されることでしょう。今回の出会いを生かし、韓国と日本の架け橋となっていただきたいと思います。

同志社大学にて


変化を信じて取り組みつづけることを確認ー児童の貧困・虐待への対応の学び合いから
第14回シンポジウム『社会の中でも子育て・子ども支援のあり方を問う』を開催

会場となった同志社大学の良心館

11月12日のシンポジウム当日は、お天気にも恵まれ、同志社大学の学生や、ボランティアをしている市民の方、社会福祉の仕事に従事されている方等が来場されました。
『社会の中での子育て・子ども支援のあり方を問う』のテーマのもと開催した本シンポジウムは、日韓両国において重要な課題となっている子どもの支援について、日本と韓国、それぞれの現場で、一人ひとりの子どもたち、またその家族と誠実に向き合う実践が行われていることを共有する、大変有意義な時間となりました。

基調講演は、福祉事務所、児童相談所、保健所等に勤務のご経験を持ち、保健福祉行政の政策運営に長年携わってこられた、関西国際大学・学長補佐、教授の道中隆氏をお招きし、お話をしていただきました。貧困の世代間連鎖や、貧困が子どもに及ぼす影響について、図やグラフを用いて、丁寧に講演くださいました。

基調講演の様子

続く事例発表では、両国から4人の専門家による講演がありました。日本からは、特定非営利活動法人こどもの里・理事長の荘保共子氏が、釜ヶ崎地域(大阪市西成区)でおこなっている実践を紹介くださいました。1977年に釜ヶ崎の子どもたちのための遊び場を作ることに始まり、現在は学童保育やファミリーホーム等の設立、独自の事業としての親と子の緊急宿泊の支援など、「この子たちに必要なことはなにか」と問いかけながら行ってきた活動をお話しくださいました。また、ファミリーホームやわらぎの家・施設長の石井勲氏からは、小規模住宅型児童養育事業(ファミリーホーム)として運営する一軒家での実践をお話いただきました。施設長である石井ご夫妻は、施設職員とともに、親と一緒に暮らすことの叶わない問題を抱える子どもたちを預かり、家庭的な雰囲気のなかで忍耐強く養育されてきました。

パネルディスカッションに登壇された事例発表の4名の講師

韓国からは、韓国地域児童センター連合会・代表の玉敬元(オク・キョンウォン)氏にお越しいただき、貧困家庭で虐待を受けている児童と向き合い支援した事例を紹介していただきました。支援が思うとおりに運ばなかったとき、支援対象であった少女に対しそれまでとは異なるアプローチをとったことで、その少女も、虐待をしていた父親までも変わっていったという事例をお話しくださいました。さらに、脱北児童グループホーム「ウリチプ」施設長である趙素娟(チョ・ソヨン)氏からは、これまでおこなってきた施設の業務を見直すことによって、疎遠になっていた親と施設スタッフとの信頼関係を構築しなおし、さらには、子どもたちを家庭に返し家族一緒に生活していくことが可能になった取り組みについて、お話いただきました。

事例発表後は、同志社大学教授・黒木保博氏をコーディネーターに迎え、パネルディスカッションをおこない、会場からの質問にもお答えいただきました。実践を通じて、親が変わり、子どもが変わり、実践者自身も変わることができるということを確認し、黒木氏は「これからも変化を信じて取り組んでいきましょう」とシンポジウムをまとめられました。


本年10月28日、秋の深まりゆくソウル市の崇實(スンシル)大学校にて、第13回“日韓こころの交流”シンポジウムを開催しました。併せて第8回専門職育成・国際交流セミナーを実施し(10月22日~29日)、日本から訪韓した7名のソーシャルワーカーと大学院生が韓国で学びを深めました。

会場となった崇實大学校

シンポジウム当日、澄み渡る秋晴れのもと、紅葉に色づく崇實大学校の会場には、福祉関係者や学生、市民の方が多数来場されました。

本年のテーマは、『地域住民が主体となるコミュニティ・ケア』です。
国や地方自治体による福祉サービスの体系では手が行き届かない部分、地域のニーズに応えきれない部分があり、新しい方向性として「地域社会」に注目が集まっています。地域住民が様々な形で参加し、自分たちで社会の仕組みを作り上げる、そのような福祉体系の多元化が必要となっていることから、本テーマが決まりました。

今回のシンポジウムでは、日本と韓国における住民主体の福祉実践について、専門家と市民のリーダーに発表いただきました。東国(トングク)大学校社会学科教授のキム・ヒョンヨン氏による基調講演「地域社会とケア」では、最近ソウル市等が進める小規模のコミュニティを通じた福祉サービスの事例について、検討しました。

基調講演の様子

つづく事例発表では、韓国側からは、子どもたちの遊び場(公園)づくりのために立ち上がり、住環境を改善していった母親たちの実践等について、日本側からは、“孤独な高齢者をつくらせない”との思いから始まり、現在では幼児保育施設の経営を行うまでに成長した主婦たちの実践等について、報告がありました。
地域のコミュニティの力を活かしつつ、行政と協力して、どう福祉の充実に繋げていけるかという、日韓に共通する喫緊の課題を深める有意義なシンポジウムとなりました。


シンポジウムに併せて実施している専門職育成・国際交流セミナーは、次代を担う日本と韓国の福祉専門職の育成を目指しています。先進的な取り組みを行っている施設を視察し、現場で活躍する専門家のお話を伺うとともに、大学院の授業に参加して、学術的な理解を深めます。

今回のセミナーでは、老人専門の療養センター(特養)やアルコール依存者のためのリハビリ施設、外国人住民との共生に力を入れる福祉館(地域福祉の拠点の施設)、児童養護施設等、様々な分野の施設を視察しました。

視察先では、ソーシャルワーカーが職員の研修や利用者家族とのコミュニケーション、広報活動等、多岐に渡る業務をこなしている姿を目の当たりにしました。専門職大学院の授業では、仕事の後に熱心に勉強し、活発に議論を交わす社会人学生たちの熱気に触れることができました。

地域福祉の拠点「総合社会福祉館」にて

韓国の専門職の、地域に発信する力強いパワーを実感して、「自分も社会変革を起こせるようなソーシャルワーカーを目指したい」と、ある参加者は抱負を語ってくれました。セミナーを通じて韓国の文化や歴史を学ぶことができたという別の参加者は、「日本と韓国、皆が少しでもより幸せに暮らせる社会になるように、ソーシャルワーカーとして頑張りたい」と話していました。

崇實大学の大学院授業に参加

また別の参加者は、施設や学校での人々との出会いを通して、「皆の心が合わされば交流ができるし、また新しいものが出来てくるのではないかと、この研修を通して改めて気づきました」と、研修の学びを表現していました。

プログラムの詳しい内容は、下記ニューズレターで見ることができます。
ニューズレター「日韓こころの交流プログラム」

アルバム

写真をクリックすると、拡大表示されます。

2014年度 日本・大阪、京都

 熱心に講義を聴く参加者

 同志社大学の学生との交流会

第12回シンポジウムを同志社大学で実施



2013年度 韓国・ソウル

崇實大学で開催の第11回シンポジウム

職業訓練学校を視察

ソウル大学大学院での講義



2012年度 日本・高知

社会福祉協議会にて福祉用具を見学

施設利用者と一緒に健康体操

高知市文化プラザで開催の第10回シンポジウム



2011年度 韓国・ソウル

崇實大学の大学院生と交流

崇實大学で開催の第9回シンポジウム

日韓の著名な専門家によるパネルディスカッション



2010年度 日本・京都

同志社大学の学生と交流

龍谷大学のホールにて開催の第8回シンポジウム

講演に聞き入るセミナー参加者