日韓こころの交流プログラム
シンポジウムとセミナーを通して、高齢化社会の課題にともに取り組む

  1. “日韓こころの交流”シンポジウム
    日本および韓国の社会福祉諸団体の協力のもと、両国で交互(一年毎)に社会福祉の専門家と一般市民を対象にシンポジウムを開催しています。両国の社会福祉関係者が一堂に集まり、国際的な視野でソーシャルワーク実践の専門性や役割などについて討議します。

  2. 専門職育成・国際交流セミナー
    福祉現場で働く若手専門職と専門職をめざす大学院生を公募選考し、約10名をシンポジウム開催現地に派遣して、一週間の「専門職育成・国際交流セミナー」を実施しています。この研修セミナーでは、高齢・児童・障害などの各分野において先進的な取り組みをしている施設の視察や大学院の授業に参加し、両国の福祉制度・実践の特徴と課題点を考察。交流を深めます。


募集要項・参加申込書のダウンロード

※2017年度の募集は終了しました。


セミナー・レポート


「障がいのある当事者の社会参加と包摂」をテーマに第15回シンポジウムを開催

2017年11月8日、ソウル市の韓国社会福祉協議会・社会福祉会館にて、第15回“日韓こころの交流”シンポジウムが開催されました。
(主催:公益財団法人ユニベール財団、日韓こころの交流プログラム実行委員会、共催:社会福祉法人こころの家族、社会福祉法人尹鶴子共生財団)

当日はお天気に恵まれ、温かな秋の日差しが降り注ぐなか、会場には福祉関係者や学生、市民の方約300名が来場されました。
シンポジウムは、ユニベール財団の伊藤勲理事長の挨拶で開式。続いて韓国社会福祉協議会の徐相穆(ソ・サンモク)会長より祝辞をいただきました。

本年のテーマは『障がいのある当事者の社会参加と包摂』。
障がいの有無にかかわらず、地域社会の中で就労し、自立した生活を送ることのできる社会のあり方が望まれる現在、社会と障がい当事者の新しい関係性について、基調講演と韓国・日本それぞれの事例発表を通じて、様々な可能性を見出すことを目指しました。

基調講演では、崇實大学校 社会科学大学の金京美(キム・ギョンミ)教授が、「社会的包摂」という概念について整理し、それを実現するため実践レベルで社会福祉士に求められる事柄について講演されました。

 

つづいて事例発表のセッションでは、韓国と日本から、各2名の施設代表方を招き、それぞれの取り組みについて講演いただきました。
韓国からは、ソウル障がい者自立生活センターの朴贊五(パク・チャンオ)代表と、重度障がい者居住施設「月坪ビラ」の朴時賢(パク・シヒョン)施設長、日本からは、特定非営利活動法人こむの事業所の松藤 聖一代表理事と、社会福祉法人素王会 アトリエインカーブの林智樹チーフに、講師として登壇いただきました。

 

つづく総合討論では、翰林大学校の尹賢淑(ユン・ヒョンスク)教授と関西学院大学の牧里毎治名誉教授をコーディネーターに迎え、フロアを交えてパネルディスカッションがおこなわれました。福祉の現場に携わっている参加者の方からは、自分の施設の状況と比較しての発言や、事例発表の講師方が普段の取り組みのなかで気を付けていることについて等、様々な質問やコメントが寄せられました。

※2017年度は諸般の事情から、「専門職育成・国際交流セミナー」は開催されませんでした。2018年度は韓国より大学院生や若手福祉専門職を招き、セミナーをおこないます。


「利用者一人ひとりの価値を尊重し、ともに生きる」-日本の福祉の“こころ”を体感
第9回 専門職育成・国際交流セミナーを実施

2016年11月6日から13日の一週間、第9回専門職育成・国際交流セミナーを実施しました。今回は韓国から、10名の福祉専門職員や社会福祉専攻の大学院生が参加し、セミナー開催地である大阪と京都の高齢、障害、児童等の諸分野で先進的な取り組みを行う施設を視察し、現場の実践を学びました。また同志社大学等の教授陣による講義を通し、学術的な面からも日本の社会福祉について理解を深めました。

熱心に講義に参加

大阪では、様々な障害から独立して日常生活を送ることが困難な人々に、生活の拠点や各種のサービスを提供している救護施設「三徳寮」、低所得者向けの共同住宅施設「サポーティブ・ハウス」、地域の子どもたちと親の拠り所となっているNPO法人「こどもの里」等を視察しました。
サポーティブ・ハウスを訪問した際、入居者の自立を支援する常駐のスタッフから、「この人にとって一番必要なことは何か、毎日考えています。血縁ではありませんが、家族のような存在で、大変なことがあっても”ありがとう”の言葉で吹き飛んでしまいます」という言葉を聞いて、参加者は「利用者を管理の対象とするのではなく、手助けし、ともに生きるという実践を見せていただけました」と、深く印象に残った様子でした。

施設内を見学

京都では、地域・行政・社会福祉法人が連携し、障害者と健常者が共に働く宿泊施設「リフレかやの里」や、四つの福祉団体が共同で運営する、地域共生型福祉施設「やすらの里」等を訪問しました。障害を持つ人を排除せず、自立した生活を送ることができるよう、ともに地域の活性化に尽力されている取り組みを知り、参加者は「このような環境で仕事ができれば、障害のある方も自尊心が高まると思いました。職員の方も誇りを持って仕事をされていて、素晴らしいです」と感心していました。また四つの法人が連携し、地域に開かれた福祉拠点をつくるという、町おこしの意味も込められた「やすらの里」の挑戦にも、大きな刺激を受けていました。

同志社大学の大学院生との交流会

同志社大学で行われた授業では、日本と韓国が共通して直面する「少子高齢化」に関わり、日本の低出産の現状について、専門家の先生から講義を受けました。講義の後には、現場で働く日本のソーシャルワーカーや大学院生との交流会が開催され、実践報告と「創造的な支援」をテーマにディスカッションが行われる等、同じ志を持つ仲間として親睦を深めました。
そのほか、セミナー中に生じた疑問や気づきを共有する時間として、セミナーの中盤と終りには、総括(振り返り)の時間が設けられています。この時間に参加者は、社会福祉を専門とする先生方に疑問点を確認し、理解を深めていました。

熱心に話し合い意見を出し合う参加者

参加者はこの研修で初めて集まったメンバーでしたが、それぞれの専門分野の知識を持ち寄って、互いに助け合いながら研修の内容を考察したり、役割分担をして記録をとったりと、チームワークを発揮していました。また現場経験が豊富で、日本の福祉システムから何かを学びとり、今後の自らの実践に役立てたいと強い探究心を持って毎日の研修に臨んでいました。
今回のセミナーを終えて、次のような感想が聞かれました。

  • 子ども達や高齢者にどういう姿勢で対応していったらいいのかと考えていましたが、日本の職員の皆さんを見て、利用者に対する接し方や、配慮の心、誠実に向き合っていくということを学びました。
  • 利用者中心を学びました。社会福祉にとって、一人ひとりの価値を大事にすることがどれだけ大切なことなのか気づきました。
  • 管理者として現場で長く仕事をしてきましたが、利用者を管理するのではなく、「彼らと一緒に」という観点に立っていったとき、今回の研修で学んだことを本当に活かすことができると感じました。
  • 一人の個人のために、どのようにしてネットワークを構築し、また社会資源を効果的に提供するのか、悩み考えていくことが大切だと思いました。人はともに生きるという社会福祉の価値を考えることができました。
  • 現場で情熱をもって仕事をしている職員の方々の「まごころ」を学びました。社会福祉はお金でも、スキルでも、システムでもなく、人がおこなうものであるという今回の学びをしっかりと心に置いて、韓国でも頑張りたいと思います。

利用者一人ひとりの価値観に配慮し、誠実に向き合う日本の現場スタッフの姿勢が、参加者の心に大きく響いたことが窺えます。参加者の皆さんは、これからもそれぞれの現場で、活躍されることでしょう。今回の出会いを生かし、韓国と日本の架け橋となっていただきたいと思います。

同志社大学にて


変化を信じて取り組みつづけることを確認ー児童の貧困・虐待への対応の学び合いから
第14回シンポジウム『社会の中でも子育て・子ども支援のあり方を問う』を開催

会場となった同志社大学の良心館

11月12日のシンポジウム当日は、お天気にも恵まれ、同志社大学の学生や、ボランティアをしている市民の方、社会福祉の仕事に従事されている方等が来場されました。
『社会の中での子育て・子ども支援のあり方を問う』のテーマのもと開催した本シンポジウムは、日韓両国において重要な課題となっている子どもの支援について、日本と韓国、それぞれの現場で、一人ひとりの子どもたち、またその家族と誠実に向き合う実践が行われていることを共有する、大変有意義な時間となりました。

基調講演は、福祉事務所、児童相談所、保健所等に勤務のご経験を持ち、保健福祉行政の政策運営に長年携わってこられた、関西国際大学・学長補佐、教授の道中隆氏をお招きし、お話をしていただきました。貧困の世代間連鎖や、貧困が子どもに及ぼす影響について、図やグラフを用いて、丁寧に講演くださいました。

基調講演の様子

続く事例発表では、両国から4人の専門家による講演がありました。日本からは、特定非営利活動法人こどもの里・理事長の荘保共子氏が、釜ヶ崎地域(大阪市西成区)でおこなっている実践を紹介くださいました。1977年に釜ヶ崎の子どもたちのための遊び場を作ることに始まり、現在は学童保育やファミリーホーム等の設立、独自の事業としての親と子の緊急宿泊の支援など、「この子たちに必要なことはなにか」と問いかけながら行ってきた活動をお話しくださいました。また、ファミリーホームやわらぎの家・施設長の石井勲氏からは、小規模住宅型児童養育事業(ファミリーホーム)として運営する一軒家での実践をお話いただきました。施設長である石井ご夫妻は、施設職員とともに、親と一緒に暮らすことの叶わない問題を抱える子どもたちを預かり、家庭的な雰囲気のなかで忍耐強く養育されてきました。

パネルディスカッションに登壇された事例発表の4名の講師

韓国からは、韓国地域児童センター連合会・代表の玉敬元(オク・キョンウォン)氏にお越しいただき、貧困家庭で虐待を受けている児童と向き合い支援した事例を紹介していただきました。支援が思うとおりに運ばなかったとき、支援対象であった少女に対しそれまでとは異なるアプローチをとったことで、その少女も、虐待をしていた父親までも変わっていったという事例をお話しくださいました。さらに、脱北児童グループホーム「ウリチプ」施設長である趙素娟(チョ・ソヨン)氏からは、これまでおこなってきた施設の業務を見直すことによって、疎遠になっていた親と施設スタッフとの信頼関係を構築しなおし、さらには、子どもたちを家庭に返し家族一緒に生活していくことが可能になった取り組みについて、お話いただきました。

事例発表後は、同志社大学教授・黒木保博氏をコーディネーターに迎え、パネルディスカッションをおこない、会場からの質問にもお答えいただきました。実践を通じて、親が変わり、子どもが変わり、実践者自身も変わることができるということを確認し、黒木氏は「これからも変化を信じて取り組んでいきましょう」とシンポジウムをまとめられました。