研究概要

代表者氏名谷口 守(たにぐち まもる)
代表者所属機関筑波大学システム情報系
役職・課程教授
助成年度2013年度

研究テーマ

地域を超えて助け合う新しいコミュニティの創発
 ― 震災復興支援の促進要因分析から ―

研究概要

 東日本大震災では個人・自治体からの都道府県を越えた援助が多く行われ,地域を超えて助け合う新たなコミュニティ活動の重要性が認識された.そこで本研究では,今後の我が国での地域間援助体制構築の一助とするため,東日本大震災において援助に関わった個人と,援助規模が大きかった自治体間による他地域援助の実態を明らかにした.また,これまで明らかにされてこなかった,他地域援助の参加に対する動機を,個人・自治体の両者から明らかにした.
 まず個人の他地域援助活動に関するWeb調査データを用い,募金・物品支援・現地活動の3つの援助活動を対象に,援助行為に最も直接的影響を及ぼすと考えられる援助の参加動機を把握した.その結果,実施動機として,募金は他の援助に比べて自らの意志で行っている者の割合が多く,物品支援や現地活動は家族や知人友人に誘われて行った者が多くなっていた.また,出生地や家族が住んでいる,訪れたことがあるなど,援助地と何かしらの縁やゆかりのある者が,特定の地域に対して自らの意志で援助を行う傾向が窺えた.
 また1554市区町村を対象に,自治体間による他地域援助の実態や援助に至る動機の把握をHP情報を通じて行った.まず,各自治体がどのような援助を行ったのか,その全体像を把握したうえで,HPデータの記述から援助先を把握しボランタリー援助の空間的分析を行った.そして,援助に至る過程を各自治体のHPの記述から抽出することにより,援助の動機を把握した.その結果,援助の動機として,自治体間同士のつながりや交流,文化的側面によるもの,援助自治体側の日常的な近隣との関係が動機の要因になっていることが明らかとなった.