研究概要

代表者氏名有馬 隆博(ありま たかひろ)
代表者所属機関東北大学大学院医学系研究科
役職・課程教授
助成年度2013年度

研究テーマ

被災地における出生障害母子相互ストレス耐性と福祉支援による社会づくり

研究概要

 本研究では、宮城県石巻、気仙沼地区の自治体、医師会、保健所や医療機関などと連携した疫学調査と、妊産婦への支援を目的とした。東日本大震災の津波被災地では、周産期合併症や低出生体重児の割合が注目された。低体重は様々な障がいの重要な要因で、成人後の生活習慣病との関連も指摘され、震災被災に伴う障がい児の増加を強く懸念している。被災地の出生障がい児の身体的、精神行動学的な発達の両面について、縦断的な観察研究を実施した。低出生体重児群(n=153、7.9%)、正常体重児群(n=1782)を登録した。さらに、対象児の妊娠中からの生活環境要因について、徹底した解析を実施し、低出生になる要因について検討した。登録した児を対象に、出生体重とそれに関連する要因について検討した。その結果、妊娠前BMI、妊娠期間中の体重増、母親の喫煙習慣、母親の受動喫煙、母親学歴および母親就労が関連することが確認された。神経行動学的な検討を、新生児行動評価により実施した。その結果、原始反射も体重が増加すると異常反射が増加する傾向が見られた。次に、罹災状況から、対照、半壊および全壊の3群で共分散分析を行ったが、群間に有意差は認められたかった。また、保健師による福祉施設や家庭訪問と連携し、適切な環境、栄養、生活指導を実施した。東日本大震災から4年が経過し、被災者の生活再建が次のステージに向かう中、環境の変化に対する被災者の、特に妊産婦への支援として、新しい地域づくりと同時に、心のケアが被災地の人々の支えとなると考えられた。